ESG経営実現のカギはサプライヤーエンゲージメントにあり!
Report|2024年3月18日
この記事は約3分で読めます
化石燃料からの脱却を―。国際社会が脱炭素への取り組みを加速させる中、企業は自社だけでなくサプライチェーン全体で対策を講じることが求められています。富士通株式会社ソーシャルソリューション事業本部の長島久美子はオンラインセミナーに登壇し、「ESG経営実現のカギはサプライヤーエンゲージメントにある」として、組織を超えた連携を求めました。
その他、環境課題に向けたFujitsu Uvanceの取り組みはぜひダウンロードしてご覧ください。
CO2の排出量削減には企業を超えた協力が不可欠
2023年末に開かれた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では各国が化石燃料からの脱却を進めることで合意するなど、脱炭素に向けた行動を加速させていく姿勢を示しました。企業が果たすべき責任も大きくなっており、社会や環境にも配慮したESG経営を実現することが求められています。
こうした中、富士通の長島久美子は「GX(グリーントランスフォーメーション)経営」をテーマとするオンラインセミナーに登壇し、富士通が提供しているESG経営の実現に向けた支援策などについて説明しました。
長島はまず、富士通の温室効果ガス排出量の推移を示した棒グラフを用いて、排出量は年々減少傾向にあることを示しました。(下図参照) その一方で、排出量の内訳を示した円グラフを見ると、Scope3カテゴリー1に該当する部分が23%に及んでいることが分かります。Scope3カテゴリー1とは、購入した原材料や部品の製造過程で排出された量で、削減するには他社の協力が不可欠な領域です。
その上で、長島はWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)のPACTプログラム(*1)での活動を紹介し、富士通などが世界初の社会実装としてサプライチェーン全体のCO2排出量データの収集・可視化に成功したことを報告しました。そして、すべてのサプライヤーが効果的に協働する「サプライヤーエンゲージメント」が重要だと指摘しました。サプライチェーンに関わるすべての事業者が連携していかなければScope3の排出量を減らしていくことはできないため、サプライチェーン全体での脱炭素の実現には企業の枠組みを超えた連携がカギとなります。長島は、「やはり温室効果ガス排出量の削減は一社では解決できない課題で、企業を超えた協力や相互のサポートがあって初めて実現していくものだと感じています。国際社会の規制の方針が定まっていないことに加え、今後も変わっていくことが予想されるため、柔軟かつスピーディーに対応していくことが大切です」と強調しました。
規制への対応を新たなビジネスチャンスに
セミナーでは、ESG経営を支える富士通のサービス「ESG Management Platform」も紹介。このサービスは、AIによるシミュレーションを通して、ESG経営を実現するために経営者が行うべき施策を提案するもので、データの収集から可視化だけではなく、分析、そしてシミュレーションを行います。さらには、シミュレーションに基づいた施策の提案まで一貫して行えることが特徴です。また、最も安い商品を提示するだけではなく、環境に配慮した機能性の高い商品を提案するなど、シミュレーション結果にいくつかのパターンを示して顧客が重視するポイントに応じた提案もできます。
「いまだ多くの企業が規制への対応はコストだと捉えているように感じます」
そう切り出した長島は、「富士通内部にもかつてはそのような意識を持つ人が多かった」と振り返ります。そうした中、富士通ではESG経営の実現を目指して全社横断のプロジェクトに取り組み議論を重ねました。すると、規制への対応を単にコストとして捉えるのではなく、ビジネスチャンスにつなげていくことが重要だという共通認識が生まれたほか、組織の内外で連携をより強めていく必要があるという課題が明らかになりました。これまでの枠組みを超えたデータや情報の共有を行うなど、富士通全体でESG経営の実現に向かって取り組むようになりました。また、規制への対応を進めないことにはグローバルマーケットでの評価や信頼は得られないという共通認識にもつながり、いま富士通は率先してESG経営に取り組んでいます。
また、データを収集・可視化していく上で大切なのがデータの透明性です。その一例として、富士通が株式会社IHI(以下、IHI)と進めている事例について紹介しました。IHIはクリーンアンモニアの普及に取り組んでおり、その製造過程でのCO2排出量を可視化するプラットフォームに富士通のブロックチェーンの技術が使われています。一連のアンモニアの製造工程におけるGHG排出量を正しく証明するためにブロックチェーンの技術を採用し、データの透明性を担保しています。
長島は、「新しい取り組みを始めるには多くのコストやリソースが必要なため、ハードルが高く感じてしまいがちです。しかし、私たちはその最初の一歩を踏み出すサポートをしっかりと行っていきます。富士通が社内実践において得た知見をお客様の課題解決に活かし、お客様がESG経営に資する事業やソリューションを世の中に出していけるように支えていきたいと考えています」と述べました。
関連リンク
サプライチェーン「全体」のCO₂排出量を可視化 業種を超えた連携を
富士通がCOP28に参加 脱炭素社会に向けたビジョンの共有を
サステナビリティ×テクノロジーで挑む:Fujitsu Uvanceの事例から
【速報】CxO意識調査:サステナビリティ推進 7割が「最重要」