Thinkers50 イノベーションアワード2023 富士通が発表 ベストセラー『選択の科学』アイエンガー教授に
Article|2023-12-20
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「経営思想のアカデミー賞」ともいわれるThinkers50(シンカーズ・フィフティ)のランキングが11月、発表されました。
ランキングを主催するイギリスのコンサルタント企業は、世界に大きな影響を与えたマネジメント思想家を隔年で表彰しています。名誉ある数々の賞の内、2023年のInnovation Awardは、人が何かを「選択」する意思決定の心理について研究するアメリカのシーナ・アイエンガー教授に贈られました。
富士通は10年にわたって賞のスポンサーを務めています。授賞式に出席する機会にあわせ、ビジネスのイノベーションがますます重要性を増す中、企業が果たすべき役割などについて考えました。
イノベーションアワード2023は『選択の科学』のアイエンガー教授
ロンドンで11月に開催されたThinkers50の各賞のセレモニーには、多くのビジネス思想界のリーダーが集まりました。華やかな雰囲気の中で受賞者が次々に登壇し、拍手で迎えられました。
「世界で最も影響力ある経営思想家」のランキングは、イギリスのコンサルタント会社Thinkers50が2年ごとに発表しています。殿堂入りした学者のリストには、ピーター・ドラッカー氏やフィリップ・コトラー氏など、ビジネス界に影響を与え続けるそうそうたるメンバーが名を連ねています。
富士通はイノベーションにつながる卓越した思想に与えられるInnovation Award(イノベーションアワード)を2013年から協賛しており、今回も賞のプレゼンターを務めました。
出席にあたり、イノベーションの定義について私なりに考えました。多くの定義があろうかと思います。一つ言えるとすれば、課題を乗り越えようとする過程は、元をたどると、一つのアイデアが起点になっているのではないかと思いました。
富士通は「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパスに掲げています。イノベーションは富士通の社会における存在意義そのものでもあります。創業以来、お客様の課題を共に解決し、新しいイノベーションを追求してきました。そして今、富士通は、メーカーからソリューションプロバイダー、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)企業へと、会社の形を変えようとしています。
サステナビリティに貢献するためには、社会の課題について十分に理解している必要があります。必要な取り組みに優先順位をつけながら、解決策を考えねばなりません。それには知識や知恵が不可欠です。
こうした意味で、思想家は私たちに希望を示してくれる存在だといえます。2023年の受賞者のSheena Iyengar(シーナ・アイエンガー)氏は、コロンビア大学ビジネススクール教授で、選択と意志決定における心理についての研究で世界的に知られています。なぜ選択には大きな力があるのかわかりやすく解説した『選択の科学』は日本語にも翻訳され、ビジネス書のベストセラーになりました。また近著の『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』は、創造的なアイデアを生むためのフレームワークを6段階のステップに落とし込み、ビジネスパーソンの間で大きな反響を呼んでいます。この度のアイエンガー氏の受賞を心から祝福します。
イノベーションに必要なマインドセットとは
顧客・社会に真に意味があるビジネス変革を進めるには、正しいマインドセットが必要です。私は2023年に公開したレポートで、「前向き思考」から「次世代的思考」にシフトする必要性について指摘しました。2、3年の短いスパンで価値を創造するのではなく、次の世代にプラスになるという視点でビジネスを考えようという提言です。
企業にとっては難しい選択です。費用もかかります。組織は企業運営が経営資源内に収まるよう管理するものですが、この範囲を「地球の限られた資源」に広げようというわけです。様々な課題がありますが、常に希望はあります。新しいビジネスチャンスを見出すことは可能です。テクノロジーとデータの活用は、ビジネスの成長と環境負荷の低減を両立させるカギだと考えています。
富士通の協業事例の中では、多国籍企業のバイエルホールディングスのバイエルクロップサイエンス社と新種の穀物を発見しようと研究を進めています。みずほ銀行とは温室効果ガス排出の削減をはじめとするESGデータを収集・計測し「見える化」しようと取り組んでいます。
また同時に、富士通グループ全体の環境負荷を低減する取り組みを進めています。たとえば、地球温暖化対策の温室効果ガス排出量の削減に向けては、「持続可能な開発のための世界経済人会議」(World Business Council for Sustainable Development)の活動の一環として、サプライチェーン全体のCO₂排出量を「見える化」するプロジェクトを主導しました。複数の企業間でカーボン・フットプリントのデータをつなぎ、受け渡しができることを確認。2023年9月、世界初の社会実装に成功したことを発表しました。
富士通が持つAIやデジタル・ツイン、量子コンピューティングといった技術は、地球が直面する課題を解決するための重要なツールになるはずです。こうした技術によるイノベーションを推し進めていきます。富士通は今後もテクノロジー企業として、サステナビリティ・トランスフォーメーションに踏み出すお客様をイノベーションの力で支援していきたいと考えています。
青柳 一郎
Ichiro Aoyagi
富士通株式会社 Solution Service Strategic本部 Co-Head
松下電器産業株式会社(現Panasonic)を経て、1998年富士通株式会社に入社。複数の事業部門において海外戦略を立案、実行。Kellogg経営大学院でMBA取得後、外務省に出向し日本とインドネシアの経済連携協定交渉に従事。2020年4月DXプラットフォーム事業本部長に就任。データアナリティクスやブロックチェーン等、データ事業を立ち上げ、2022年4月からFujitsu Uvance本部副本部長として、社会課題解決を目指す事業を国内外で牽引。2023年4月より現職。
ホワイトペーパー「サステナビリティ・トランスフォーメーション:人と自然が共存する豊かな未来へ」
サステナビリティとビジネス目標は両立できる:実現に向けた「4つのステップ」とは
富士通 SVP青柳一郎による、Fujitsu Uvanceで培った知見から、企業がDXを推進しつつ環境課題で成果を上げるために必要な4つのステップをはじめ、富士通の取り組みや、企業が今すぐはじめることができるアクションプランなど、サステナビリティ・トランスフォーメーションの推進に役立つ洞察を公開しています。
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