COP29開催:デジタル技術でグリーンアクションを加速
Report|2024年12月17日
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気候変動対策を話し合う「国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)」が、アゼルバイジャンで開かれました。富士通は、今年もジャパンパビリオンで開かれたセミナーなどに参加し、実データを活用したCO2排出量の企業間データ連携の取り組みなどを紹介しました。
COP29開催 デジタル化も重要テーマに
COP29は「ファイナンスCOP」と呼ばれるように、気候資金が主な焦点となり、今年も様々な国の代表やNGO、民間企業等が参加し、脱炭素という共通の目標に向かって議論が交わされました。そして、気候変動における「デジタル化」も大きなイシューとなっていることから、今年はCOPの会期中に設けられる各日のテーマに「科学・技術・イノベーション/デジタル化」が設定されました。国連のデジタル技術に関する専門機関であるITU(国際電気通信連合)によれば、デジタル化が主要なテーマに設定されたのは今回が初めてです。
生成AIが世界を席巻し、IT分野ではますます電力消費量が増加していくことが見込まれていることから、気候変動対策の観点からの対応が求められており、COP29でも熱のこもった議論が行われました。このうち、ITUは、「グリーン・デジタル・アクション COP29宣言」を発表し、ボグダンマーティン事務総局長らに加え、COP29ババエフ議長、国連組織、各国政府およびグローバルな通信・IT企業の代表が参加するハイレベルラウンドテーブルが開かれました。宣言では、気候変動対策のためにデジタル技術を活用していくことなど8つの原則が取りまとめられています。ITU事務総局長は、「デジタル技術なしでは、”グリーン“はなしえません。ですから、私たちは力を合わせる必要があります。すべてのデジタルアクションは、グリーンを核としなければなりません」と述べました。
このラウンドテーブルには、富士通の執行役員 EVPでCSSO(最高サステナビリティ&サプライチェーン責任者)の山西高志も出席し、当社におけるGHG排出量削減に向けた取り組みを説明しました。
サプライチェーンにおけるCO2排出量削減の取り組みを紹介
山西は、COPの会期中、様々なイベントに参加しました。
11月13日には、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が進める国際キャンペーン「Race to Zero(レース・トゥ・ゼロ)」に関してメディアが主催するセッションに出席し、富士通の取り組みを紹介しました。山西は、富士通が2040年度までにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量をネットゼロとする目標を掲げていることを説明しました。
「私たち自身の排出量については、サプライチェーンのパートナーと協力することが重要です」 そう切り出した山西は、排出量の目標値を設定することや排出量を可視化すること、そして、パートナーとどのように連携していくかが重要だとしました。一方で、「デジタルサービス企業としての富士通にとってより重要なことは、私たちの顧客が排出量を削減したり、再生可能エネルギーをさらに導入したりすることを支援し、彼らがネットゼロ、ネットポジティブになる手助けをすることです」と述べました。
生配信された本セッションは、グローバルで5000人から6000人ほどにオンラインで視聴され、注目の高さが伺えました。
グローバルサプライヤーとのデータ連携で脱炭素へ!
山西は11月16日、COP29会場内のジャパン・パビリオンで総務省主催の「ICT×グリーンセミナー」にも登壇しました。これには、世界銀行や日立製作所、日本電信電話などあわせて5つの組織が参加し、世界銀行から脱炭素におけるテクノロジーの活用可能性、企業から各社の地球温暖化対策 に資する テクノロジーについて紹介がありました。
山西は、富士通のサプライチェーンに関わる取り組みを紹介するプレゼンテーションを行い、セミナー前日に発表したプレスリリースの内容について話しました。それは、富士通がグローバルサプライヤー12社と連携して、実データを活用したCO2排出量の可視化と削減に向けた取り組みを開始したことについてです。サステナビリティ経営の実現を支援する「ESG Management Platform」という富士通のサービスを活用し、グローバルサプライヤー12社と、グローバル標準に則った実データを用いたPCF(製品カーボンフットプリント)の算出とCO2排出量のデータ連携を実現しました。山西は、「サプライチェーンを担う企業間でデータを交換し、排出量を可視化します。そして、それをもとに分析を進め、サプライチェーンのどこが排出量の多い”ホットスポット”になっているか、削減するためにできる対策はなにかなどを検討することができます」と述べました。
一方で、AIを始めとするデジタルテクノロジーの利用拡大に伴って懸念されているのが、データセンターにおける電力消費量の大幅な増加です。富士通は、こうした課題を解決するためのさまざまなソリューションを提供していて、山西は、「そのうちの1つが、2027年の提供開始を予定している『FUJITSU-MONAKA』※1です」と強調しました。これは、スーパーコンピュータ「京」や「富岳」※2を実現したテクノロジーをもとに開発を進めている次世代プロセッサで、山西は、「2027年の時点で、他社が提供するプロセッサの2倍の電力効率や高速処理の実現を目指します」と述べました。
また、「AI computing broker」というミドルウェア技術についても紹介しました。これはAIを使用する際のGPUの使用量を最適化するソリューションです。GPUの使用量を半減させることで、消費電力も半分に抑えることができます。
プレゼンテーションを終えた山西に対し、モデレーターから「取り組みを進めるためには何が必要か」という問いが投げかけられました。山西は、「ポイントは2つあり、その1つは企業間のコラボレーションです。なぜなら、一企業が単独でなせるビジネスは存在しないからです。そして、2つ目は、CO2排出量を可視化・分析し、最適化する方法を考えることが大切です」と指摘しました。その上で、「これらのあとに大切なのが、ビジネスごとのROI(投資収益率)です。よって、政府と協力することに対する何らかのインセンティブが必要だと思います」と述べました。
今回のCOPでは、これまでよりも気候変動とAIをはじめとするテクノロジーを紐づけた内容のイベントが多く開かれました。生成AIの普及によって、電力消費量が増加するという、脱炭素に向けては逆風ともとれる要素がある一方、気候変動問題での取り組み強化を加速させるツールとして、テクノロジーやイノベーションへの期待が高まっています。富士通は、お客さまとともに社会課題の解決と持続可能な成長に挑む「Fujitsu Uvance」を通して、気候変動対策の加速に貢献することを目指しています。今回の参加を通じて、その実現が十分に可能であることを実感しました。また、様々なセクターが参加するイベントへの参加をとして、クロスインダストリーでこの地球規模の課題に取り組んでいく重要性を訴えることができました。富士通は、今後もイノベーションを加速させ、気候変動対策に関する取り組みに貢献していきます。
※1 FUJITSU-MONAKA:この成果は、NEDO (国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構) の助成事業の結果得られたものです。
※2 スーパーコンピュータ「京」や「富岳」:理化学研究所と富士通が共同開発。
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