2024年12月開催「富士通テクノロジー戦略説明会」をレポート "AI×世界をリードする技術"の融合で戦う、富士通独自AIへ挑戦

Report|2025年1月10日

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富士通は2024年12月12日、報道関係者、投資家・アナリスト向けにテクノロジー戦略説明会を開催しました。この記事では、本説明会の内容を紹介します。登壇者は以下の3名です。

富士通株式会社 執行役員 CTO、CPO、プラットフォーム担当 ヴィヴェック マハジャン
富士通株式会社 執行役員 EVP、富士通研究所 所長 岡本 青史
富士通株式会社 執行役員 EVP、CDXO、CIO 福田 譲

福田 譲、ヴィヴェック マハジャン、岡本 青史

AIを軸に顧客企業のDXパートナーへ

ヴィヴェック マハジャン

初めに、当社CTOのヴィヴェックが、テクノロジー戦略について説明しました。富士通は、モダナイゼーション、Uvance、コンサルティングの3つを成長ドライバーに位置づけています。これを支えるのがAIを軸とした5つのキーテクノロジーです。膨大なデータを処理できる「コンピューティング」、データをつなぐ「ネットワーク」、データをセキュアな環境で利用するための「データ&セキュリティ」、データからインサイトを引き出す「AI」、人文社会科学とテクノロジーを組み合わせた「コンバージングテクノロジー」、この5キーテクノロジーによって、顧客企業のDXを推進していきます。 

3つの成長ドライバーを支えるテクノロジー戦略 AIを軸にした技術領域の融合による新しい価値を想像し、モダナイゼーション、Uvance、コンサルティングといった、ソリューションビジネスを差別化します。

"AI×世界をリードする技術"で世界に挑戦

5キーテクノロジーの軸となるAIについて、富士通の強みは、「エンタープライズ向けの課題解決、業務プロセスに対応できるソリューションを提供していること」(ヴィヴェック)にあります。エンタープライズ企業が保有するコンフィデンシャルなデータをセキュアに扱い、また特定の業務プロセスにカスタマイズできるソリューションを提供できるのが富士通のAIの価値です。具体的には、「エンタープライズ生成AIフレームワーク」がそれを実現します。

エンタープライズ生成AIフレームワークは、膨大なデータを構造化するナレッジグラフを使ってLLM(大規模言語モデル)が参照できるデータ量を拡大する「ナレッジグラフ拡張RAG」、プロンプトエンジニアリングやファインチューニング不要で業務に特化したAIモデルを自動生成する「生成AI混合技術」、生成AIの回答が企業規則や法令に準拠しているかどうかを監査する「生成AIトラスト」の3つ技術で構成されており、いずれも富士通独自のテクノロジーです。

エンタープライズを支えるAI戦略 Fujitsu Kozuchiの中にエンタープライズ生成フレームワークと大規模言語モデルTakaneがあります。これらを構成するのはナレッジグラフ拡張RAG、生成AI混合技術、生成AIトラストの3つの技術です。ナレッジグラフはRoot Casual Analysis :過去事例から障害発生や対策案提示、Software Engineering:ソースコード理解支援/設計書作成、Vision Analytics:映像から特定事象検知 /危険対策レポート作成、Question & Answering:膨大なマニュアルを俯瞰した高精度なQ&A。 AIコアエンジンはGenerative AI:生成AI技術、AI Security:ガバナンス、防御、信頼性 、Vision AI:映像認識、Graph AI:グラフ解析。これらをAI Computing 基盤とAIを支えるネットワーク基盤が支える。

また、富士通のAI戦略として、ヴィヴェックは、「世界をリードしている富士通の技術とAIを融合することで差別化をはかり、世界で戦える独自AIへ挑戦していく」ことを掲げました。当社は、AIワークロードの高速処理と省電力性を両立した2ナノArmプロセッサ「FUJITSU-MONAKA」、2026年度までに1000量子ビット超の拡張を目指して技術投資をしている超伝導量子コンピューティングのほか、AIがもたらす偽・誤情報のリスクを軽減するデジタルトラスト、オールフォトニクスネットワーク(APN)、ソーシャルデジタルツインや海洋デジタルツインなど、世界最先端のテクノロジーを有しています。 

世界で戦える富士通独自AIへの挑戦 AI×世界をリードしている技術の融合で差別化をはかる 量子・コンピューティング:量子/コンピューティング技術で人智の及ばない領域まで学習 プロセッサ、MONAKA サーバ、Private AI Platform on PRIMERGY・高密度GPUサーバ、エッジAIサーバ・PRIMERGY CDI データ&セキュリティ:AIがもたらす偽・誤情報による社会/企業のリスク軽減に向けた「デジタルトラスト」の実現 ・Trustable Internet ・AI セキュリティフレームワーク ・Data Trust ・Ambient認証 ネットワーク:大規模NW運用をAIが最適制御/分散AIの世界を 先進NWで実現 モバイル:ソフトウェア基地局によるAI-RAN融合 ・フォトニクス: オールフォトニクスネットワーク(APN)、 高性能/サステナビリティを両立する800G/1.2T技術、 光電融合の進化と1.6T超高速化技術 ・ソフトウェア:NWオーケストレーション(Virtuora) コンバージングテクノロジー:2030年までに地球規模のサステナビリティ・トランスフォーメーションを実現 ・ソーシャルデジタルツイン ・海洋デジタルツイン ・人の行動変容技術

共創し要領よく学ぶ、富士通のマルチAIエージェント

続いて、富士通研究所 所長の岡本が、富士通のAIエージェントの技術アップデート、および同日発表した「現場作業支援エージェント」と「マルチAIエージェントセキュリティ技術」について説明しました。

岡本 青史

 当社は10月23日に、対話型のAIエージェント「Fujitsu Kozuchi AI Agent」を発表しています。「AIエージェントは自らが置かれた環境を自己学習するのが特徴。なので、環境をどのように学ぶのかが技術的に重要なポイントになる」と岡本。今回当社は、AIエージェントに、重要なコンテキストだけを効率よく学習する「コンテキスト記憶」の機能を追加したほか、業務や作業実行に必要な能力が能動的に自己学習する機能を強化しました。さらに、AIエージェントの行動を制御するガードレールの機能を追加しています。

富士通のAIエージェント 対話型生成AIから自ら課題解決を推進するAIエージェントへ 効率的な選択記憶、能動的な自己学習、ルールによる行動制御の技術をアップデート コンテキスト記憶:必要な部分のみを効率的に記憶 自己学習 :業務や作業実行に必要な能力を学習 行動制御:AIエージェントの活動を企業ルールに準拠 物流倉庫 作業員の危険行動を自律的に判断し、安全管理する 店 舗 購買行動を分析し、最適な接客や販促物を提案する 公 共 不審な行動を早期に発見し、安心安全な社会を実現する ヘルスケア 患者のリハビリに伴走し、個人適合した支援を提供する 交通 ヒヤリハットの運転習慣を特定し、予防策を提示する スポーツ 選手の運動特徴を分析し、個人適合した技術向上を支援する

同日発表した「現場作業支援エージェント」は、製造や物流などの現場に設置されたカメラ映像を空間認識し、さらに作業指示書や安全規則などのドキュメントを参照することで、自律的に現場改善の提案や作業レポートの作成を行い、人の作業を支援する映像解析型AIエージェントです。強化された自己学習の機能により空間や作業の認識能力を取得し、コンテキスト記憶の機能を用いて長時間映像を最小の映像記憶容量で高精度に解析するのが特徴です。

AIエージェント 現場作業支援エージェント 安全規則などのドキュメントをもとに、作業現場のカメラ映像をAIエージェントが解析し、現場改善の提案や作業レポートを作成 コンテキスト記憶 長時間映像を高精度に解析:長時間映像理解ベンチマークで最小の映像記憶容量で世界最高精度達成 自己学習:空間や作業等の認識能力を取得 倉庫内安全管理:AIエージェントが安全管理に必要な空間理解能力を追加し事象検知から原因分析、レポート起票まで実行 ライブ映像から危険事象をエージェントが分析 運行中のフォークリフトの3m以内に人が接近 エージェントがレポートを作成する。インシデントのレポート案を作成しました。ご確認ください

また、同じく新発表「マルチAIエージェントセキュリティ技術」は、セキュリティに特化したスキルやナレッジを持つ複数のAIエージェントが連携することで、ITシステムの脆弱性を悪用する攻撃や生成AIへの攻撃といった新たな脅威へのセキュリティ対策を支援します。 

マルチAIエージェント セキュリティAI マルチAIエージェントによるプロアクティブなセキュリティ対応を実現 異なる専門スキルを持つAIエージェント間のナレッジ連携で堅牢性を高める共創学習の新技術 単独AIの潜在バイアスによる誤判断の問題を解決 同じ環境で異なる専門/スタンスのAI同士が対策を議論 バイアスの無い、高信頼なセキュリティ対応を実現  攻撃と防御シナリオを、実環境を模擬した仮想環境上で協調させ、最適な施策を実行 新たな脅威を自動で見つけ出し、未然に対処 脆弱性の発見と対処に、数週間かかっていた専門作業を、AIエージェント群により即日実行

岡本は、富士通の考えるマルチAIエージェントの世界観について3つの要素を挙げました。1つ目は、複数のエージェント同士が相互作用しながら共創的/敵対的に学習する「共創学習」の技術。2つ目は、エージェント同士が相互作用する場に連携ポリシーを適用してセキュリティと信頼性を確保する「セキュア・エージェントゲートウェイ」。3つ目は、AIエージェント間での分業とタスク実行の整合性を制御してパフォーマンスを最適化する「AIワークフロー制御」の技術です。今回発表した「マルチAIエージェントセキュリティ技術」は1つ目の共創学習に関する新しいテクノロジーとなり、攻撃をするエージェント、防御をするエージェント、その影響をテストするエージェントが仮想環境上で共創し、未知の脆弱性を自動で発見して最適な対処策を実行します。 

富士通のマルチAIエージェントの世界観 異なるAIエージェントのセキュアな連携により、プロアクティブに課題を解決 共創学習 複数のエージェント同士が相互作用しながら、共創的/敵対的に学習する技術 複雑で未知の問題への柔軟な対応  セキュア・エージェントゲートウェイ エージェント間連携のプライバシーやセキュリティリスクに対応し連携ポリシーを場に適用する技術 情報交換とアクションの信頼性を確保  AIワークフロー制御 AIエージェント間での分業とタスク実行の整合性を制御する技術 環境や課題の自動理解よる最適なタスク分業

生成AIと豪華ミュージシャンが共創

岡本は最後に、AIとプロクリエイターが共創して音楽生成をするAmadeus Codes社と富士通の取り組みを紹介し、そこで創作した曲を紹介しました。この曲は、著作権の問題をクリアしている4万曲の学習データを用いて、ミュージシャンが生成AIとのやり取りのなかでインスパイアされたアレンジをするという新しいスタイルで創られています。B'zツアーギタリストのYukihide YT Takiyama氏、音楽プロデューサーでAmadeus Code社長の井上 純氏、サンプリングヒップホップ作曲家の呼煙魔氏がこの作曲に参加しました。 

AIとプロクリエイターが共創し、新たな音楽生成に挑戦 生成AIの最大の課題である著作権をクリア ミュージシャンが生成AIとのやり取りのなかでインスパイアされ アレンジをする新しい作曲スタイルを創出 音楽生成AI:Amadeus Code社×富士通 著作権を持つ40,000曲の学習データ ビートトラック 呼煙魔:サンプリングヒップホップ作曲家 ベース・シンセ 井上 純:オリコン1位55作品著名音楽プロデューサAmadeus Code社長 ギ タ ー Yukihide YT Takiyama:B'zツアーギタリスト

マルチAIエージェントを社内でも実践

最後に、当社CIOの福田が、富士通における生成AIの社内実践の状況を紹介しました。

福田 譲

当社が全社で生成AIを活用できる環境を整備したのは2023年5月。それから約1年半が経過した現在、約3万5000人の社員がコード生成や提案作成、レポート自動化、アンケート分析などの業務で生成AIを活用し、利用数は1日でおよそ17万回に上ります。「利用数は1年前の約10倍になった。社内での業務で生成AIの活用が定着している」と福田は言います。

AIエージェントの社内活用も進めています。例えば営業組織では顧客への提案資料を作る際にマルチAIエージェントを使っているケースがあります。対話型AIエージェントに「このような目的の提案資料を作ってほしい」といったプロンプトを投げると、裏で課題を特定して顧客提案の仮設を作るエージェント、富士通のオファリングを熟知したエージェント、さらにその情報を提案の内容に落とし込むエージェント、社内フォーマットでPower Pointを生成するエージェントなどが連携して、最適な提案資料を出力するといった使い方です。

富士通における生成AI実践の最新状況 富士通自身の生成AIによる変革を加速するため、全社で生成AIを利活用できる環境を2023年5月に整備し全社一丸で推進 17万回 自社内で徹底的なAI実践 今では1日でおよそ17万回のAI活用 (1年前の約10倍) Monthly Active User(*1)は約35,000名 92万時間 Fujitsu Kozuchi 因果発見を活用し、AI利用による作業時間効率化の因果を分析 最初の1年間でおよそ92万時間相当の作業効率化効果 1,100名 AIタスクフォース:富士通でのAI推進をリードするDAO(*2)型コミュニティ 356組織から1,100名が参加 AIビジネス活性化やAIガバナンスなど、様々なテーマ AI Agent AI Agentを実践的に用い、さらなる業務変革 を推進 まずはフロント業務でのエージェント適用がスタート

社員の生成AI活用について、Fujitsu Kozuchiの機能の1つである「因果発見」を用いて分析したところ、1年間でおよそ92万時間相当分の作業効率化に寄与したという結果になりました。 

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