持続可能な世界のための貢献 富士通のCTOが語るオープンソースへの取り組み

富士通のCTOのヴィヴェック マハジャンの写真

Article | 2023年12月5日

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富士通は、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスのもと、サステナブルな世界の実現に向けて、研究開発とビジネスを推進しています。オープンソース技術は、持続可能な価値を他社と共創していくための重要な鍵を握っています。

そこで新たに取り組むオープンソースプロジェクトについて、当社執行役員 SEVP CTOのVivek Mahajan(ヴィヴェック マハジャン)に話を聞きました。

二極化する世界をオープンソースがつなぐ

---今なぜ、富士通はオープンソースに注力するのでしょうか?

 近年、新しい技術がオープンソースコミュニティから生まれる傾向がますます強まっています。多様性のある優秀な開発者、豊富な開発リソースを持つ企業が世界中から集まって協力することで、世界共通の課題を解決する技術の進化が期待されています。

 当社は、世界をより持続可能にしていくために、社会課題の解決にフォーカスにした研究開発を推し進めています。オープンソースコミュニティへの参画を通じてグローバルプレーヤーとアライアンスを組むことで、当社の先端技術はより多くの社会課題をより早く解決に導くことができるでしょう。

 世界には様々な社会課題が山積していますが、近年特に表面化してきたものの1つに、世界の二極化があります。

 当社が9カ国1800人のビジネスリーダーを対象に行った独自調査によると、42%のビジネスリーダーが、サステナビリティのためにはグローバルな協力が不可欠であるにもかかわらず、今世界では異なる社会的価値観の間で二極化が進んでいることを危惧していました。テクノロジーの観点においても、社会的価値観の相違による分断、権利を持つものと持たないものの二極化が進んでいます。この二極化に歯止めをかけるのが、デジタル化による両者の接続であり、77%のビジネスリーダーは「持続可能性のためのデジタル化」に重点を置くようになったと回答しています。

 持続可能性のためのデジタル化に対して、オープンソース技術が果たすべき役割は大きいと考えます。新しいデジタル化の技術を迅速に普及させ、どこにでも実装できるようにするためには、オープンソースのエコシステムが不可欠だからです。

---富士通は、いつからオープンソースに取り組んできたのですか?

 当社は、オープンソースコミュニティへの貢献で長い歴史があります。当社がLinuxのサポートを始めたのは1999年であり、その後2000年初頭にサーバーベンダー各社と共にThe Linux Foundationの前身であるOSDL(Open Source Development Labs)を設立し、以降、オープンソースプロジェクトのエコシステム拡大をけん引してきました。2005年に世界に先駆けてミッションクリティカルサーバーでLinuxカーネルをサポートし、“ミッションクリティカルLinux”の市場を切り拓いたのは富士通です。2007年には、OSDLをベースに、業界各社と協力してThe Linux Foundationを設立しました。今後のLinuxやKubernetesでの開発では、The Linux FoundationとIOWN(Innovative Optical and Wireless Network) Global Forumとの連携・開発促進を通じ、次世代インフラであるDisaggregated Computing(当社PRIMERGY CDI)を当社がオープンソース開発貢献を通じて実現していく新たな技術革新の挑戦も始まっています。

 また、スーパーコンピュータ「富岳」の開発では、オープンソースコミュニティとの連携に重点を置き、豊富なオープンソースソフトウェアやISV製品を活用できるLinuxディストリビューションと、ArmアーキテクチャをベースとしたCPU「A64FX」を採用しました。

 当社は、これからも、オープンソースコミュニティとの連携によってエコシステムを構築することを大切にしていきます。直近では、「Unified Acceleration」、「Web3」、「AI」の分野で新たにオープンソースプロジェクトをリードしていくことを発表しています。

富士通のCTOのヴィヴェック マハジャンの写真
富士通のオープンソースの取り組みを語るVivek Mahajan
富士通の新しいオープンソースプロジェクトの図
富士通の新しいオープンソースプロジェクト

お客様の選択肢を増やす「FUJITSU-MONAKA」エコシステム

--- Unified Accelerationの分野における富士通の取り組みを教えてください。

 2023年10月5日に、当社は、The Linux Foundationが設立した「Unified Acceleration Foundation (UXL)」に発足メンバー企業として参画しました。UXLは、単一ソースコードでCPUやGPU、FPGAなど様々なアクセラレーターに最適化されたネイティブバイナリを生成できるようにすることを目指す団体です。当社は、UXLでのオープンソースコミュニティ活動を通じて、お客様が、「FUJITSU-MONAKA」を含めた様々なアクセラレーターを標準プロトコルで実行可能にします。これは、お客様のハードウェアの選択肢を増やすための取り組みです。

 「FUJITSU-MONAKA」は、当社がデータセンター向けに開発を進めているArmベースの2ナノメートルCPUです。スーパーコンピュータ「京」と「富岳」で培ったマイクロアーキテクチャ、低電圧技術などの独自技術と、2ナノメートルプロセス、最新Armアーキテクチャなど業界最先端の技術を採用し、省電力性とパフォーマンスを両立しています。競合比2倍の電力効率で、お客様にカーボンニュートラルなグリーンデータセンターをもたらします。同時に、競合比2倍のパフォーマンスで、AIワークロードを中心としたコンピューティングの高速処理を実現します。

 「富岳」のCPU「A64FX」のオープンソース開発の流れを踏襲する「FUJITSU-MONAKA」は、Armエコシステムの幅広いオープンソースソフトウェアとISV製品を利用可能にしています。主要なLinux OSディストリビューションをサポートし、GCC、glibc、live-patch、papiといったシステムアーキテクチャを標準化しました。また、Python、Java、LLVMなどの標準ツールでの使いやすさを高めています。

OSSコミュニティと共に異種ブロックチェーンを接続

---Web3の分野で、富士通はオープンソースにどのような貢献をしていますか?

 次世代のインターネットとして注目されるWeb3は、デジタル空間上で個人や企業が信頼を持ってつながることができる分散型ネットワークです。当社は、2023年3月からパートナー向けに提供を開始した「Web3 Acceleration Platform」を通じて、自社で取り組んできたトラスト、ブロックチェーン、コンピューティングの技術と活用のノウハウをオープンにし、Web3の分野でのコミュニティ構築や開発コラボレーションを促進しています。

 Web3の要素技術となるブロックチェーンには様々な種類が存在し、異なるブロックチェーン同士を連携して情報をやりとりする相互運用性(インターオペラビリティ)が課題になっています。当社は、異なるブロックチェーン同士を容易に連携できる独自技術「ConnectionChain」を開発し、同年6月に「Web3 Acceleration Platform」のデータトラスト基盤「Data e-TRUST」に試験統合しました。

 「ConnectionChain」の肝は、複数のブロックチェーンを1つの整合性を持ったシステムとして動作させる「拡張スマートコントラクト」技術にあります。各ブロックチェーンの仕様の違いを吸収する連携部には、Hyperledger Foundation下でインターオペラビリティ確保をテーマに活動するオープンソースプロジェクト「Hyperledger Cacti」で開発したプラグイン(Cacti-LP)を取り込むことで、開発を効率化しています。これにより、当社の「Data e-TRUST」からHyperledger Cactiをサポートする多様なブロックチェーンへの連携が可能になりました。反対に、他社ブロックチェーンから当社の「Data e-TRUST」へ連携するためのプラグインは、当社が開発し、そのソースコードをHyperledger Cactiコミュニティに寄贈しています。

 将来的に「ConnectionChain」は、Web3のブロックチェーン同士だけでなく、Web3とWeb2.0以前の資産の間にもインターオペラビリティをもたらす技術へと発展していく必要があります。当社は、オープンソースコミュニティやパートナーエコシステムとの連携により、それを実現していきます。

共創のためのWeb3の図
「ConnectionChain」でWeb3の世界を実現

自社開発のAutoMLとAI公平性技術をオープンソース化

---AI分野での富士通のオープンソースの取り組みを教えてください。

 当社は、約30年にわたってAI開発に取り組んできており、2014年から2022年までのAI関連発明において日本で最も多い970件の特許を保有しています。2023年4月には、お客様やパートナーが最新のAI技術を安全に試すことができるAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi (code name) - Fujitsu AI Platform」(以下、Fujitsu Kozuchi)を公開しました。

 「Fujitsu Kozuchi」では、生成AI、自動機械学習技術(AutoML)、人の動作を認識する行動分析技術「Actlyzer」などのAIコアエンジンと、新薬開発、材料探索、製造、小売りなど様々な用途・業界向けのAIイノベーションコンポーネントを提供しています。さらに、説明可能なAIを実現するために、AIが導き出す結果の信頼性にスコアを与える機能や、AI倫理の観点で学習データの偏りに起因するバイアスを検知するAI公平性技術を備えています。

 2023年8月に当社は、Fujitsu KozuchiのAIコアエンジンのうち、独自開発のAutoMLとAI公平性技術をオープンソース化しました。これら2つの技術は同年9月に、それぞれ「SapientML」、「Intersectional Fairness」の名称で、The Linux Foundationの正式なオープンソースプロジェクトになりました。今後、世界中の開発者とともに技術発展をしていくことになります。当社は、各プロジェクトにおける技術アップデートを「Fujitsu Kozuchi」へ順次反映していきます。

---今後も、オープンソースへの貢献を継続していきますか?

 持続可能な世界のためには、企業、業界、国の枠を越えた協力が不可欠です。富士通のオープンソースコミュニティへの貢献と連携は、グローバルな協力を推進し、お客様とパートナーに持続可能な価値を提供します。オープンソースコミュニティを通じたグローバルプレーヤーとのアライアンスや標準化は、当社のビジネスにとっても非常に合理的です。

 当社は今後、コンピューティング、ネットワーク、AI、データ&セキュリティ、コンバージングテクノロジーの5つの技術領域に研究開発リソースを集中していきます。これらは当社が強みを持ち、デジタルイノベーションによってビジネスの変革と持続可能な社会を実現するために必要な技術です。当社の技術の価値を高め、社会課題を迅速に解決に導くために、当社はこれらの領域で、オープンソースコミュニティとの連携を続けていきます。

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今後、5つの技術領域に研究開発リソースを集中していく

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